ツバメの視点

発達障害とともに、新たな視点で世界を見る

発達障害と就労支援

発達障害のある方が社会で活躍するためには、その人の特性に合った職場環境や働き方が重要です。しかし、就職活動や職場での人間関係など、働く上での様々な困難に直面することも少なくありません。

この記事では、発達障害のある方が利用できる就労支援サービスや、職場での合理的配慮、自分に合った働き方を見つけるためのポイントについて解説します。

発達障害と就労の現状

発達障害のある方の就労状況は、近年少しずつ改善されてきていますが、依然として多くの課題があります。厚生労働省の調査によると、発達障害のある方の就労率は一般の方と比べて低く、また、就職できても職場環境や人間関係の問題から離職するケースも少なくありません。

一方で、発達障害の特性を活かして活躍している方も多くいらっしゃいます。例えば、細部への注意力や集中力、独創的な発想力、誠実さなどは、職場で大きな強みとなることがあります。

大切なのは、一人ひとりの特性に合った職場環境や働き方を見つけ、必要な支援を受けながら、その人らしく働くことです。

就労支援サービスの種類

発達障害のある方が利用できる主な就労支援サービスには、以下のようなものがあります。

1. 障害者職業センター

各都道府県に設置されている障害者職業センターでは、職業評価、職業準備支援、ジョブコーチ支援などのサービスを提供しています。

  • 職業評価:作業検査や面接を通じて、適性や課題を明らかにします。
  • 職業準備支援:就職に必要なスキルや知識を身につけるためのトレーニングを行います。
  • ジョブコーチ支援:職場に専門家が訪問し、働き方のアドバイスや職場環境の調整を行います。

2. ハローワーク(公共職業安定所)

ハローワークには障害者専門の窓口があり、職業相談や職業紹介、求人情報の提供などのサービスを受けることができます。また、「障害者就職面接会」や「障害者就職支援セミナー」なども開催しています。

3. 就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、一般企業への就職を目指す障害のある方に、就労に必要な知識やスキルを身につけるための訓練を提供する福祉サービスです。

  • 職業訓練:パソコンスキル、ビジネスマナー、コミュニケーション能力などの訓練を行います。
  • 実習体験:企業での実習を通じて、実際の職場環境を経験します。
  • 就職活動支援:履歴書の書き方や面接対策、企業とのマッチングなどを支援します。
  • 定着支援:就職後も一定期間、職場での悩みや課題に対するサポートを受けられます。

4. 就労継続支援事業所(A型・B型)

一般企業での就労が難しい方に、働く場を提供する福祉サービスです。

  • A型(雇用型):雇用契約を結び、最低賃金以上の給与を得ながら働きます。
  • B型(非雇用型):雇用契約は結ばず、作業内容に応じた工賃を得ながら働きます。

5. 障害者就業・生活支援センター

就労面と生活面の両方から支援を行う機関です。就職活動のサポートだけでなく、生活リズムの整え方や金銭管理など、働き続けるために必要な生活面のサポートも受けられます。

就労支援サービスの利用方法

就労支援サービスを利用するには、以下のような流れがあります。

1. 相談窓口に問い合わせる

まずは、お住まいの地域の相談窓口に問い合わせてみましょう。

  • 市区町村の障害福祉課
  • 地域の障害者就業・生活支援センター
  • ハローワークの専門窓口
  • 発達障害者支援センター

2. 障害者手帳や診断書の準備

サービスによっては、精神障害者保健福祉手帳や療育手帳、医師の診断書などが必要になることがあります。事前に確認し、必要書類を準備しましょう。

3. サービス等利用計画の作成

福祉サービス(就労移行支援など)を利用する場合は、相談支援専門員によるサービス等利用計画の作成が必要です。自分の希望や目標、必要な支援について相談しながら計画を立てます。

4. 支給決定を受ける

市区町村から福祉サービスの支給決定を受けた後、実際にサービスを利用開始します。

職場での合理的配慮

2016年に施行された「障害者差別解消法」により、企業は障害のある従業員に対して「合理的配慮」を提供することが求められています(民間企業は努力義務、国や地方公共団体は法的義務)。2024年からは民間企業にも法的義務化されました。

合理的配慮とは、障害のある人が他の人と平等に働くために、個々の状態や必要に応じて行われる配慮のことです。発達障害のある方に対する合理的配慮の例としては、以下のようなものがあります。

環境面での配慮

  • 作業環境の調整:騒音や視覚的な刺激を減らす、個室や仕切りのある席を提供するなど
  • 感覚過敏への配慮:照明の調整、イヤーマフの使用許可など
  • 休憩スペースの確保:一時的に休憩できる静かな場所の提供

コミュニケーション面での配慮

  • 指示の出し方の工夫:口頭だけでなく、文書やメールでも指示を出す
  • 会議の進行方法の工夫:事前に資料を配布する、発言の機会を明示的に設けるなど
  • フィードバックの方法:具体的かつ建設的なフィードバックを定期的に行う

業務内容・働き方の配慮

  • 業務の明確化:業務内容や手順を明確に文書化する
  • タスク管理の支援:優先順位の付け方や進捗管理の方法を具体的に示す
  • 柔軟な勤務形態:在宅勤務、フレックスタイム制、短時間勤務などの選択肢を提供
  • 業務の分担や調整:得意な業務を中心に担当するなど、適材適所の配置

合理的配慮を申請する際のポイント

職場で合理的配慮を受けるためには、自分から申し出る必要があります。以下のポイントを参考にしてみてください。

1. 自分の特性と必要な配慮を整理する

  • どのような場面で困難を感じるか
  • どのような配慮があれば能力を発揮できるか
  • 過去の経験から、効果的だった配慮は何か

2. 適切なタイミングと相談相手を選ぶ

  • 入社前、入社時、または必要性を感じた時点で相談
  • 直属の上司、人事担当者、産業医など、相談しやすい相手を選ぶ
  • 必要に応じて、就労支援機関のスタッフに同席してもらう

3. 具体的かつ建設的に伝える

  • 自分の強みや貢献できる点も一緒に伝える
  • 具体的な困難と、それに対する具体的な配慮を提案する
  • 会社や同僚の負担が少なく、効果的な配慮方法を考える

4. 定期的に見直す

  • 配慮の効果を定期的に振り返り、必要に応じて調整する
  • 業務内容や環境の変化に合わせて、新たな配慮を検討する

自分に合った働き方を見つけるために

発達障害のある方が充実した職業生活を送るためには、自分の特性に合った働き方を見つけることが大切です。以下のポイントを参考にしてみてください。

自己理解を深める

  • 自分の強みと弱みを把握する:得意なこと、苦手なこと、興味のあることを整理する
  • 過去の経験から学ぶ:これまでの仕事や学校での経験から、自分に合う環境や条件を考える
  • 専門家のアセスメントを活用する:必要に応じて、職業評価や心理検査を受ける

職業選択のポイント

  • 特性を活かせる仕事を探す:細部への注意力、集中力、記憶力、パターン認識能力など、自分の強みを活かせる職種を考える
  • 職場環境を重視する:騒音レベル、人との関わりの頻度、変化の多さなど、自分に合う環境条件を考慮する
  • 働き方の柔軟性を確認する:在宅勤務、フレックスタイム、短時間勤務などの選択肢があるか確認する

キャリア形成の考え方

  • スモールステップで進む:いきなり理想の仕事にこだわらず、段階的にスキルや経験を積む
  • 専門性を高める:特定の分野で専門知識やスキルを深めることで、自分の価値を高める
  • 多様な働き方を検討する:正社員だけでなく、契約社員、パート、フリーランスなど、様々な働き方を視野に入れる

就労成功事例

発達障害のある方の就労成功事例をいくつかご紹介します。

事例1:ITエンジニアとして活躍するAさん(ASD)

Aさんは自閉スペクトラム症の診断を受けていますが、プログラミングの能力を活かしてITエンジニアとして働いています。集中力と論理的思考力が評価され、複雑なシステム開発を担当しています。

成功のポイント

  • 自分の強み(集中力、論理的思考力)を活かせる職種を選んだ
  • 在宅勤務を週2日取り入れ、環境調整を行った
  • コミュニケーションはチャットツールを中心に行い、対面での打ち合わせは最小限にした

事例2:事務職として働くBさん(ADHD)

Bさんは注意欠如・多動症(ADHD)の特性がありますが、事務職として働いています。タスク管理ツールを活用し、自分なりの工夫で業務を効率的にこなしています。

成功のポイント

  • タスク管理ツールを活用して、業務の優先順位や締め切りを視覚化した
  • 短時間集中型の作業スタイルを取り入れ、定期的に休憩を取るようにした
  • 上司と定期的に面談し、業務の進捗状況を確認する機会を設けた

事例3:接客業で活躍するCさん(ASD)

Cさんは自閉スペクトラム症の特性がありますが、カフェのスタッフとして働いています。マニュアル化された業務と、お客様への丁寧な対応が評価されています。

成功のポイント

  • 業務手順を明確にマニュアル化し、視覚的に確認できるようにした
  • 接客の定型フレーズを事前に練習し、自信を持って対応できるようにした
  • 感覚過敏に配慮して、休憩時間に静かな場所で休めるよう配慮を受けた

まとめ

発達障害のある方が働く上では、様々な困難に直面することがありますが、適切な支援や配慮、そして自分に合った働き方を見つけることで、その人らしく活躍することができます。

就労支援サービスを活用し、職場での合理的配慮を受けながら、自分の強みを活かせる仕事を見つけていくことが大切です。完璧を目指すのではなく、少しずつ経験を積み、自分に合った働き方を模索していきましょう。

また、困ったときには一人で抱え込まず、支援機関や信頼できる人に相談することも重要です。様々な支援の選択肢があることを知り、必要に応じて活用していくことで、より充実した職業生活を送ることができるでしょう。

前の記事 学校での合理的配慮
次の記事 自閉症スペクトラムの特性理解